温泉

料理

セナも泊まった宿を支えて半世紀

 ゆのごう館では、テレビ等で話題の料理人・大田忠道氏の指導のもと料理を提供している。「作州黒」使用の黒豆ご飯などが人気を呼び、旅行新聞社主催の"日本100選"に4年連続入選したという、料理自慢のお宿だ。
女将の八惠子さんは、この家に入って50年。業務への精勤や地域貢献が評価され、数年前に黄綬褒章を授与された。女将業を通じ様々な人と出会ったが、こちらに在りし日のアイルトン・セナが投宿したこともあったという。


DATA
清次郎の湯 ゆのごう館
岡山県美作市湯郷906-1 
TEL.0868-72-1126
一泊/12,000円〜
(お一人様、二食付き)
日帰り入浴/お食事とセットでのプランのみ ※要予約
泉質/ナトリウム・カルシウム塩化物泉
http:www.yunogokan.co.jp

外観





  ゆのごう館  女将 安廣八惠子さん

・年齢は。

75歳です。

・見えませんね。やっぱり温泉に毎日入ってらっしゃるからですかね。

いえいえ。

・女将さんになられたきっかけは、ご主人とのご結婚がきっかけですか。

そうです。

・ご主人と出会われたきっかけを教えてください。

お見合いです。

・そこで何かしら気が合って、って感じですか。

そうですね。私は田舎で育ったもんで。

・岡山県内?

はい。だいたい友だちは都会の方を目指して出て行ったんですよ。

・東京とか。

私は8人兄弟の女の子1人だったもんで、母親がね。

・遠くに行っちゃうと寂しいと。

ええ。最期まで面倒みようと思って、近いところに嫁がせてもらいました。

・じゃあ最初から岡山県の中でと。

そうです。

・結婚されてから女将さんになられたということですが、何年ぐらいになりますか。

50年ですかね(笑)。

・女将さんになってなかったら、どんな職業をされていましたか。

そうですね。私たちの場合は、職業までの道筋じゃなかったんですよね。
だから家にいて、裁縫したり家事をしたりして家庭の主婦になるのが、誰もがそうだったもんで。
別にこの仕事がどうしても好きだというので来たわけじゃないんですけど、
まあ必然的にこうなって。

・たまたま嫁いだ先が旅館だったという。

ええ。旅館だった。

・女将さんになって一番嬉しかったことは。

自分ではよく分からずじまいに来たんですけど、
一般の方が会うことが出来ない方とお会いすることもできるし、
私が何年か前に黄綬褒章を頂いたんですよ。

・そうなんですね、すごいですね。それは湯郷でずっと女将さんとしてやってきたことで?

そうですけど、やっぱり女将さんだけでは頂けない、
皆さんに奉仕しながらでないといけないもので、
色々と商工会から県知事賞も頂いたりしないと黄綬褒章が頂けないので、
ここの旅館だけで頂けるようなものじゃないんですよ。

・女将さんが地域のために活動されて、貢献して、県の後押しもあってと。

県連まで商工会に出て、副会長までさせてもらったり。
扇千景さんが大臣になられた時に、女性もやっぱりご褒美をあげたいからという言葉が出まして、
国土交通省からの速達がありました。

・じゃあ扇大臣にもその時お会いしたと。

いえ。次の方がおられましたね。

・お客様で変わった方が見えられたりもします?

変わった方は、アイルトン・セナさんね。

・いらっしゃったんですね。

一緒に写真撮ってもらいました。

・そういう方がいらっしゃると、嬉しかったりしますか。

いやいや最初はよく分からない。全然分かってなかったんですね、田舎にいたんで。
で、子どもの友だちが、
アイルトン・セナさんが走る時は夜中じゅう見てるんよって 1週間程前に聞いて、
そんなに偉い人かなっと思って。

・世界的な有名人ですものね。

そうですね。

・お風呂も入られて。

お風呂はねえ、さすがに外国の方だから入られませんね。シャワーで。

・そうなんですか。もったいないですね。

女性のマネージャーさんや、スポンサーになっている油のメーカーの方々も大勢来られまして、
その方達は入っていかれましたよ。 それに、「セナ蕎麦」って言うて、
セナさんの食べられた蕎麦を再現して食べてもらいました。

・そういうメニューもあったんですね。

ええ。 で、まあ今一番話題はなでしこジャパン。
話題でね、湯郷を全国的に知名度を上げてもらっていますからね。

・女将さんの接客哲学のようなものがあれば教えてください。

まずは親しみやすい旅館で、皆さんに喜んでいただけますように、
常連様にも初めての方にもリピーターになってもらうように、
また来たいと思っていただきたいというのが信条です。

・それは従業員の皆さんもそういう思いですよね。

はい。ここに書いてくださっているんですけど(お客様が書いた思い出のアルバムを見ながら)、
また来たいとか、よかったとか色々書いていただいています。

・結構書いてありますね。

ええ。時には辛口もありますけど(笑)。

・厳しいですね(笑)。そういう厳しいのもあるんですね。

書いてくださいますよ。そういう時は反省です。

・ゆのごう館の自慢を教えてください。

お料理の部門で、新鮮なものを心がけてお出ししています。
また料理部門では大田先生の指導のもとに、日本百選に4年連続で入選させていただきました。
で、地元名物の黒豆をたくさん入れた、五穀米の黒豆ご飯を出していて
「お料理の中で黒豆ご飯が一番美味しいわ」って言われたりするんです。

・聞いただけで美味しそうですね。

それがもうお水で炊かないんです。それなりに出汁も考えられて、
お出汁と濃い味の秘伝のもので。お水では炊かない。

・深い味わいなんでしょうね。

ええ、そう。美味しいですよ。

・そのご飯が食べたいって、また来られる方も多いんでしょうね。

「これが好きじゃ」言うてね。四季折々のね、ご飯も作っております。 秋が松茸ご飯とかね。

・なるべく黒豆だけじゃなくて、こちら地元のものを使うようにされているんですか。

ええ、そうです。

・女将さんの特技はありますか。女将さんらしい特技、例えばお琴とか。カラオケとかでもいいですよ。

踊りを習っておりまして。

・踊りといったら。

日本舞踊。それはやっぱり要るものじゃと思ってしたんだけど、
この頃もう足の方の関係でやめております。

・見に行かれたりは。

高梁に歌舞伎が回ってくるんですけど、年に1回高梁の方にね。
東京に行った時に歌舞伎座の方にもね。

・東京へは仕事で行かれるんですか。

全国女将の会とかありますからね。そういう時についでに。 あと、私の趣味は写真です。

・あれ(館内の写真を指差して)は撮られたんですか。

この前、北海道行って撮ったのがあれで、あれもこれも私が撮ったんです。

・お上手ですね。

棚田の写真も撮ったしね。

・これはお休みの日に撮られたんですか。

休みじゃないけど、ちょっと出た時にですね。 北海道の写真もあるし、ぜひ見てください。
雪で足止めされて大変だったけど。

・プライベートではご旅行されることが多いですか。

そうですね。

・お休みは何日か取られますか。

今頃はそうですね。

・湯郷の中で一番好きな所とか、お気に入りの場所があれば教えてください。

湯郷というところはいい所なんですよ。
お医者さんもあるし温泉もあるし、
ほんと不便なことが1つもない、山の中でも。
で、お人もよろしいし、どこが悪いということもない。
災害もないし、湯郷温泉自体は田園温泉と言われて山の中で、
平らなところで温泉があるというのは自慢のような、
ちょっと変化のない温泉地というとそうかもしれないですけど、
この頃色々と企画をしてもらって、湯郷温泉にもからくり時計があったり、
オルゴール館があったり、 昭和のおもちゃ館があったり、鉄道模型館があったり、
足湯があったり、だんだん色々なものが出来てきています。
で、この度、2年か3年前に新しくお宮さんが出来たからね。

・お宮ができたんですか。

ええ。お宮さんが前の建物よりも新しいのが出来て、
そこで子宝の湯といって 、ここは硫黄ですから、いつまでも温かいんですよ。
入ったら体に気泡腺が付いて保温効果があるんですよ。
で、ここで、おじいちゃんが何年か(子どもが)できなかったご夫婦の次男坊のことを頼んだら、
どうもここで頼んだからできたような気がする言うて喜んで、妊娠して報告に来てくださって、
赤ちゃんが出来て報告に来てくださって、百日で報告に来てくださって、
写真も奉っているんですけど、赤ちゃんができたと言って喜んでくれた、
あれが一番嬉しかったかな。

・それは嬉しいですよね。

子どもさん連れて、若夫婦とおじいちゃんとで来てくださったんですよ。
みんなで喜んだんですよ。

・そういうのは嬉しいですね。

ええ。だから体にもいいような気がする。ここは皮膚病にもいいって。
アトピーとか、お医者さんともタイアップして、 温泉と薬との効能で、
お医者さんも勧めていたりします。

 

 

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