温泉

料理

女将が守る雅びな心とゆとりの空間

 1,000坪というゆったりした敷地に広がる日本庭園。そこには自家源泉を使用した、趣の異なる12もの湯処が点在している。
 この広い空間を取り仕切るのは、女将の信子さんだ。
 お妃気分が味わえる女性向けの"バラ湯"など、ここ三朝館では老舗としての品格を保ちながら、目新しいプランも意欲的に取り入れている。また愛犬と一緒に宿泊できる専用のお部屋などは、動物好きな信子さんの「あったらいいな」が形になったものだ。


DATA
三朝館
鳥取県東伯郡三朝町山田174
TEL.0858-43-0311 
一泊/13,000円〜
(お一人様、二食付き)
日帰り入浴/大人1,000円、子ども500円(11:00〜21:00)
泉質/ナトリウム・塩化物泉、ラジウム泉
http://www.misasakan.co.jp

外観





  三朝館 女将 名越信子さん

・女将さんになられたきっかけは、ご主人様とご結婚されたからということでよろしいでしょうか。

そうですね、あの、ここは私の伯母の家でしてね、伯母の息子が戦死したんです。
長くなりますけど…いいですか?

・大丈夫です。

それで、私が継ぐことになったんです。

・じゃあご結婚がきっかけというか、そういうご家族の… 

はい、(結婚の)以前からそういう風にして、それで結婚して始めた…、女将業ですか。
まだ伯母がおりましたからね、その時には。まあ、若女将ですか。

・そこで女将さんになられて、それ以来、ということですね。

はい。

・何年ぐらいになりますか?

それ、女将になりましてからですか? えーとですね…30〜40年くらい…、
ちょっと空白がありますからね。 ちょっとよそに行ってたことがありますしね。

・そうなんですか。

はい、はい。まあ30年ぐらいですね。

・余所に行かれていたというのは、何か別の仕事をされてたんですか。

ええ、主人の方がね。

・ご主人様は、こちらで働かれているんですか。

もう亡くなりまして。それからずっと一人で。 もう18年ぐらいですね。

・ご主人様がお亡くなりになる前は、こちらで働かれてたんですか。

はい、そうです。一緒に。こちら(の建物)は主人が建てたものなんです。

・ずっとお二人でされてたんですね。

はい。

・ご主人と出会われたきっかけは。

見合いですね。

・気が合ったんですか、やっぱり。

そう、ですね(笑)。

・ご存知だったんですか。

いえ、知り合いではなかったんですけどね。 まあ周囲が「いいんじゃないか」って言うんで、ね。
はい(笑)。

・仲は良かったですか。

え〜っ…そうですね…、まあ普通でしょうかね。
ケンカは仕事のことでね、いろいろありましたけど、 まあ普段はもう、普通どおりで。

・じゃあ仕事でけっこう、意見を…

まあねえ、意見が合わない時もありますしね。

・女将さんの接客哲学みたいなものがありましたら教えてください。

ちょっと難しいことも聞かれるんですね(笑)。
それに適しているかどうかわかりませんけれども、あの、
「一期一会」って、ね、言葉がありますね。 お茶の言葉ですけれども。
一回一回の出会いを、大切にするという。お客様に対してですね。

・そういう気持ちで、毎日…。

はい。普段はね、細やかな気配りを、しかも気取りのない 自然体の、自然な感じのサービスですね。
それから、一生懸命の心、そういうことを大切にしております。

・わかります、(女将さんの)雰囲気で。

そうですか? いえいえ(笑)。

・すごくお話しし易いです。
女将さんというとすごく厳しい方なのかなと思ってたんですけど。

あまりぽんぽん言わない方なんですよ(笑)。

・大人しいんですか。

どっちかと言ったらね。そう言ってもいいくらいなんですけどね。

・そうなんですか。

(笑)。 どうなんでしょうか、まあ人様じゃないとわかりませんけど(笑)。

・ああ、従業員の方からすると、厳しいかもしれない。

そうですね…、まあ厳しくないとは思いますけどね、自分では。

・仕事に必要なことだったら、言わなくちゃいけないですもんね。

そうですね、はい。

・先ほどおっしゃった〝おもてなしの心〟は、
従業員の皆さんも共有してらっしゃるんですか。

はい、はい、そうですね。そういう感じで、私を見ててください、って感じでね。
まあ手本、にもなりませんけど、そういう感じでね、ゴチャゴチャは言いません。

・女将さんになっていなかったら、どんなことをされてたと思いますか。

私はね、あまり好きじゃなかったんです。こういうね、サービス業が。
だけどやはり、生まれ変わっても女将さんとして、おもてなしをしていると思いますね(笑)。

・それはまたどうしてなんですか。

ま、内気な方なんですけどね、
人に接する…こういう仕事が好きなのかなと (今では)思っております。

・内気だから、逆に、こういう職業がいいんじゃないかと思われたんですか。

いえ、もう、考えられませんね。他のことなんて。 やはりもう、これかな、と思って(笑)。

・そうなんですね。
じゃあ、女将さんになって 一番嬉しかったことは何かありますか。

そうですね…、うちが好きで、しょっちゅうおいでいただくお客様、ですね。

・常連のお客様。

はい。それが一番嬉しいことですね。 リピーターさんが割といらっしゃるんです。


・それは県外の方?

ええ、県外の方。まあ、県内の方もたくさんございます。

・でも県外から何回も通うっていったら、そうとうお好きなんでしょうね。

一カ月に2〜3回おいでになりますからね、ご夫婦で。

・本当ですか!?

そういう方もあります、ご夫婦とか。家族の方もね、ございますね。
こんな古いところに来ていただいて…と思って(笑)。 古くなっちゃいましたからね、うち。

・そんな風には見えないですよ。お庭もきれいだし。

庭がねぇ、割とゆったりしてるんですよ。
ここ(ロビー正面)だけじゃなしに、お風呂場の方にもございますからね。
まあ周囲がずっとお庭でね、そういうゆったりした点がいいんじゃないかなぁと思います。
私もよそに旅してね、こういう庭があったり、こういう空間があるってことはね、
いいと思うから、そういうところを気に入っていただいてるんかなぁと思って。

・じゃあ女将さんがこちらの自慢をされるっていったら、
もうこのお庭になりますかね。

そうですねぇ、はい。それしかないんですね。
それからお風呂…まあ古くなりましたけど、ゆったりしてるっていう。
1,000坪のお風呂で売っておりますからね。
それから女性の方にはバラ湯ね。もう8年くらいになると思うんですよ、バラ湯は。
週に3回してます。これはまだ山陰地方でどこもなさってない時に、うちがしましたからね。

・やっぱりいい匂いがするんでしょうね。

はい。
それからワンコちゃんと一緒に泊まっていただけるお部屋を、7年くらい前からしてるんですよ。
ちょっと古いお部屋ですけどね、改装して。 それも割とおいでになりますね、同じ方が。
いまのところね、ワンコちゃんの旅館というのがあまりありませんのでね。

・ワンちゃんは温泉に入れるんですか。

温泉にはしてないんです、うち。 ちょっと洗うところはしてますけどね。温泉にはちょっと…。
したらいいんですけどね、ちょっとまだ…。

・作るとなったら大がかりになりますもんね。

はい。

・でも一緒に来たいですもんね、犬飼ってらっしゃる方は。

ええ、ええ。なかなかねぇ、一緒じゃないとワンコちゃんもさみしいですから。
喜んでいただいてます。

・じゃあ同じ方が何回も泊まられたりするんですね。

ええ。それがね、私が好きなんですよ。 すっごく動物が好きなんです。
預かってたんです、事務所で。事務所じゃいけないなっていうんで、 他の棟を利用しましてね。
従業員もみんな好きなんですよ(笑)。

・それで思いつかれたんですね、そういうサービスがあったらいいんじゃないかって。

そうです、事務所で預かっててね。 大変ですからね、事務所で預かるってことは。
ワンワン鳴くしね。 それでね、ご一緒に泊まっていただけるということにしてね。
ちょっとサークルを買いましてね、犬のお部屋を。
おそらくその中には入っておられんと思いますけどね(笑)。 出ちゃってね。

・走り回っちゃって(笑)。

しょうがないですからね。

・いいサービスですね。なかなかこちらのような老舗の大きな旅館ではできないですよね。

よそでも始められたところはあります。ここ最近です。
まあそういったとこが、よそにないとこ、ですね(笑)。

・三朝館さんの自慢、ということですね(笑)。

はい(笑)。

・女将らしい特技〟はありますか。三味線とか。

それねぇ、昔は琴を習ってましたけどね。小さい頃。小学校からずーっと。 今はもうしてません。
ただ音楽の鑑賞とか、ミュージカルとか、宝塚、そういうことが好きですね(笑)。
それから美術、絵画ですね。絵が好きで。


・見に行かれたり。

ええ。行きます(笑)。

・お休みの日は、そういうところに行かれるんですか。

休みはありません。全然休みはないんですよ、一年中。 ただ行きたいと思う時を休みにしてね。

・じゃあもし観たいミュージカルみたいなのがある時は、
「でかけます」っていうことで、お出かけになるんですね。

ええ、音楽ですね。 私、ヴァイオリンが好きでね。習ってないんですけどね、大好きなんですよね。 千住真理子さんとかね、聴きに行きます。こちらの方にも来られますしね。
米子の方に来られますね、千住さんは。 そういうことを、楽しみにね。
元気が出てくるんです(笑)。

・そういうのがないと、頑張れないですもんね。

はい。最近は宝塚の方はちょっと、行けないんですけど…。
東京の方が早いんですけど、飛行機で、ここから1時間ですからねぇ。
それ、いちいち言わないで、内緒で行くんですよ、私(笑)。 ちょっと用事のあるような顔をしてね。

・これ、載っちゃいますけど大丈夫ですか(笑)。

まあ、いいです、いいです(笑)。

・この周辺で遊びに行かれることは?

近くに三徳山というお寺がございますね。
それと、赤瓦という…まあ倉吉になるんですけど、古い建物を利用して。
古い建物をね、酒屋さんとか、いまはしなくなってるじゃありませんか。
そういうのを利用して、建物の中に、いろいろお店ができてるんです。

・ここからすぐですか?

そうですね、車で20分ぐらい行ったとこになります。 それから中国庭園ていうのもありますね。
ここからすぐなんですけどね、山を行かれたら。

・お泊まりになった方が足をのばすには、この辺が最適かなと。

こういうところですかね。 まあ遠くに行きますと砂丘とかありますけど。
大山とかねぇ、県内にはありますけど。 近くでは、そういったところです。
まあ三朝温泉はね、温泉の質が…ラドンを多く含んでおりますので。
〝世界トップクラスのラジウム温泉〟と言っておりますから。
フランスの都市と姉妹提携もしているんですよ。
ラジウムを発見したキュリー夫人の関係で、姉妹提携して。

・(姉妹都市の)看板が外にありましたね。

ええ。それで病気治療とかね、医学研究とか、 そこの温泉病院、岡山医大病院、
そこで研究されてます。

・やっぱり毎日入られて、調子はいい感じですか。

それはもう、本当に、質が大変いいですからね。 生まれてからずっと入ってますから。
普通のお湯とは全く違いますね。 それでお客様が「顔がツルツルする」とおっしゃってます。
私もしばらく入らないでいて、こちらの温泉に入ると 本当違うと思います。
入っていると慢性になっちゃってね、わかりませんけれども。

・化粧水も出てるんですよね。

ええ、「三朝みすと」。 いまもう、たくさん売れてます。
東京の方までね、持ってってますからね。

・源泉100%を使ってあるからいいですよね。

ケガとかかぶれとか、さっと振ってもいいですよね。

・こちらでも買えるんですか。

ええ、売店に置いてます。

 

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