温泉

料理

各種の資格で裏方としても奮闘

 世界屈指のラジウム泉として名高い三朝温泉だが、その効果を最も高めるのは「湯気の吸引」だと言われる。
そのためこちらの「大水車岩風呂」は湯気を逃がさぬよう、地下に設えられている。また料理にもすべて温泉水が使われるというから、ここではラジウム泉を存分に堪能できるのだ。
 館内を見守るのは、女将の美紗子さん。学生時代から各種資格を取得し、それらを活かしつつお宿を支えてきた。なんと調理師免許まで持っている。


DATA
花屋別館
鳥取県東伯郡三朝町三朝818-6
TEL.0120-126878 
一泊/11,000円〜
(お一人様、二食付き)
日帰り入浴/大人500円、子ども無料(15:00〜21:00)
泉質/ナトリウム・塩化物泉、ラジウム泉
http://www.misasaonsen.com/

外観





  花屋別館 女将 藤井 美紗子 さん

・年齢はお聞きしてもよろしいですか?

年齢は不詳でございます(笑)。うふふ。

・わかりました(笑)。

みなさん、お客様にも嘘ついてますんで(笑)。ばれてはいけませんので(笑)。

・女将さんになったきっかけというのは、やはりご主人様とご結婚をされて? 

そうですね。ここに嫁いでからですね。

・ご主人様との出会いは?

そうですね。まあ昔のお見合いから恋愛にという感じでしょうか。
私は広島から嫁に来まして、あまり知り合ってから 回数もない内に連れ去られてきました(笑)。

・じゃあご主人様が熱烈に、女将さんに来てくださいと?

違いますけどね(笑)。うふふ。

・では女将さんになっていなかったらこれをやっていた、というような職業は?

そうですね。うちは嫁に来るまで手に職を付けるということで、
親にとにかくお茶とかお花とか和裁・洋裁とか、
昔は資格を取れということで、 高校時代から色んな資格を取ってきたわけで、
ですからどちらかと言えば 洋裁の方に進みたかったんです。

・こちらに嫁がれてなかったらそういった道に進みたかったと。

そうですね、手先のことで身を立てたいと思ってましたね。

・それは女将さんの仕事に活かされていますか。

そうですね。昔は今みたいなパソコンもないですから、 タイプの時代ですのでね。
英文タイプ、和文タイプ、テレックスとか 電話交換士も免許がいりましたしね。

・そうなんですね。

ええ、今みたいなことないんでね。だから簿記とか、昔はそろばんですね、
そういった級とか全部取ってきましたので、 ここに来て即、全部役に立ちました。事務員としてね。

・優秀な(笑)。

優秀な事務員で(笑)。

・ひとり何役も。

だから慣れない仕事っていうよりも事務員になったようなつもりで、
事務関係の仕事は全て経理から始まって色んなことが役に立ちました。
なかでも交換台は昔は大きな、ご存じないでしょうけど、
ヒモで結ぶような交換台があったんですよ。
お客さまの部屋と外線はヒモで繋ぐというように、交換台も、
免許がないと機械が入らないという時代で。

・そうなんですか。じゃあ免許もお持ちで。

はい。免許持ってたのでテレックスも入ったり。
テレックスって分からないでしょうけど、 テレタイプみたいな。
業者間との予約が入ってくるのをOKを出すというね。
今で言う何ていうかな、打ったものが向こうに行くって感じなんですけども(笑)。
そういった形の物も入れさせてもらったりして、まあ役に立ちました。

・素晴らしいですね。

いい嫁でしょ(笑)。あははは(笑)。 いい事務員です(笑)。

・女将さんらしい特技みたいなものは。お花とかお茶とか。

そうですね。和裁もしてきたので、着付けとか自分の着物縫ったりとか、
まあ洋裁学校も行ってましたので、色んなことがまあ、
不思議と役に立つようなことをしてきたんですね。

・なんかもう女将さんになるため、のような気がしますね。

全く違ったんですけどね(笑)。思いは違いましたけど役に立ちました。

・女将さんになって一番嬉しかったことは。

そうですね。まあ事務員もしながら何でもかんでも仕事を覚えるために 各職場を全部回る、
回らなければ分からないというゼロからのスタートでしたのでね、
ご飯炊きも、まかないもしたり洗い場も入ったり、それで直ぐ調理師免許も取って。

・そうなんですか。

そうなんです。取ったんです。
それだけ持ってなかったので、調理場に入って手伝うことで 調理師の免許を取ったりして、
やっぱり社員に色んなことを教えられながら、
まあいつの日か女将として認められるような間柄になってきたのかなと思うんです。
誰が教えるということがなかったものですから、年配の親のような社員がいっぱいでしたから。

・じゃあ昔はその、大女将さんからこう…。

全然旅館にタッチしてない母だったものですから、舅の方が来たら即、
「あんたが全部せないかん」とすぐ言われましてね。

・それ以来何十年と?

歳は不詳です(笑)。うん十年ね(笑)。だから女将というよりも、雑役みたいなことしながらね、
今日まで今もしていますけど。だから、着物着て朝晩のご挨拶以外は雑役です。

・表にも出て、裏にも入り…。

そうそう。なんでもしなきゃいけないような家ですので。

・女将さんの接客哲学のようなものはありますか。必ずこれは気をつけるというようなことは。

来ていただいたお客様に必ずもう一度来ていただくという、
リピーターさんになっていただくという思いで接客はしています。
それは私だけでなく社員も全員でね。 やっぱりもう一度帰っていただきたいという思いですね。

・ゲン担ぎでこれはやっている、とかそういうことはありますか。

ゲン担ぎで、というのは思いあたらないですけど、
やっぱりただ一泊二食食べてお帰りなって、 クレームもなくて、まぁどう言うかな、
ほぼ満足というかな、 何もなくて帰っていただくだけではいけないという、うちの教育方針ですか。 そこにプラス何かがないとまた帰ってきていただけないし、ましてや感動、一言でいえば感動かな? ここまでしてくれるんだここの宿は、という思いまでしていただけるように、
という教育をしたように思いますね。

・それはもう接客?

はい接客もフロントも全てお客様に接するものもそうですね。

・ではこちら花屋別館の自慢といったら。

スタッフがね。いま恵まれているというか。
やっぱり今言うのに普通だったら聞き流すのに、ああそうですかと済んじゃうことも、
やっぱりそういうことだったらこうしてあげた方がいいんじゃないか、
こうしてあげたら喜ばれるんじゃないかとか。

・もう自分で考えて動いたり?

そう。そうれをフロントに言ってきたりすることで、今日の旅は何で来られているのかでも、
結婚記念日なんですよでも、ああそうですかで終わるかもしれないけれども、
じゃあ何かして差し上げなきゃという思いが係にないと、こっちには伝わりませんので、
やっぱり聞き逃さないで、一言ひと言ね。

・そう言うことを聞かれたら、何か差し上げたり。

そう何かプレゼントを差し上げたり、記念撮影してあげるとか、
朝までにお持ち帰りいただけるような写真を作ったりとか、
まぁちょっとしたことが思い出に残るお手伝いをしてあげるのは、
やっぱりお客様と接触したものでないと、いちいちお客様がこれだからこれ、といったね。

・マニュアルは作れないですよね。

そうです。本当にいま言われたように、この仕事にマニュアルはないもんですから。

・じゃあスタッフの人がひとり一人臨機応変に、お客様と接して意識を高めているのですね。

そうそう。そうですね。

・もうそれ以上、もう一歩踏み込んで。

そう。もう一歩踏み込んでね。
うちは子どもさん向けに作っているので、ファミリーターゲットというますか、
何年になりますかね、お母様方が赤ちゃんを連れて手ぶらで見える宿として、
ベビーグッズは全てご準備しております。だからキッズルームがあったりとか。


・なかなか小さい子どもがいたりすると、旅行するのやめておこうかな、となりますもんね。

そうですね。だからオムツでもうちは全部揃えてますし。

・そうなんですか。

はい。ミルクはお客様の体に合わせたものがありますからあれですけど、
それ以外のものは全て手ぶらでOK、というだけのグッズは用意してあります。

・じゃあやっぱり、小さいお子様がいらっしゃるお客様が多いですか。

そうです。そうです。やはり手ぶらは手ぶらでいいですけど、 ベビーグッズの一覧表があって、
必ず事前にお客様にお送りして、 いる物に全部マルをしてもらって、
お見えになった時にお部屋にご準備してるんですけども。

・素晴らしいですね。

その時必ず「何歳の何なにちゃん」と事前に書いていただいて、
当日係には全部、何歳の何なにちゃんが今日お見えになるということを連絡すると、
やっぱりお着きになられた時に「何なにちゃんいらっしゃい」ということが言える訳なんですよ。
子どもさんはもちろん喜ばれますよね。突然来て〝何なにちゃん〟って呼ばれ、こんにちはって。
お母さんやお父さんに対しても、ちょっとした心遣いといいますかね。
子どもさんが楽しかった、遊んでもらったとか、キッズルームがあったとかいうことは。

・のびのびできますよね。

そうですね。
だからそれが思い出になって、また来年夏休み来るねとか、 去年来たからまた今年も来たよとか、
子どもさんの成長とともにまた来ていただけると嬉しいですよね。
ここが里帰りみたいな感じで来てくださったり、社員とももちろん仲良くなっちゃって、
そういった雰囲気なんですね(笑)。家族が帰ってきたって感じで、格式ばったご挨拶ではなくて、
やあお帰りという感じで(笑)、迎えられるような宿になってきたかなと思いますね。

・じゃあやっぱり常連の方が多いんですかね。

そうですね。
親子三代で見えたりとか、今お客様の年代というのが 私ぐらいの年齢? 若い人ね(爆笑)。
まあ多いですね。グループとかね、 女性も男性もグループ旅行になってきましたね。
団体がなくなってきたんですよね、今。

・そうなんですか。

そう。だんだんこの5、6年減ってきましたね。どうしてもグループ旅行で。
ご家族単位が多いですね。親子三代とかね。

・その方たちは県外から?

県外もありますけど県内両方ですね。
まぁかえって、近いところで ゆっくりしたいという方もありますしね、
広島、岡山、兵庫県が多いですね。

・お休みの日というのはないとは思うんですが。

ないですね。

・じゃあ、ちょっと休憩したいなとか気分転換したいなとかという時は、どの辺に行かれますか。

どこも行かないですね(笑)。 私は商工会とか女将の会とかで出掛けることはあるんですけどね。

・もう完全にプライベートで出掛けられるということは、まずないという。

何十年もないです(笑)。でもそういった会であちこちは行っているんですよ。

・そういうのも楽しいですよね。

そうですね。

・じゃあちょっとお茶を飲みに行ったりとかも…。

しませんね。田舎ですからね、ここだけの話(笑)。 倉吉行ってもね、
私がお茶飲んでたら、行った先に電話が入るようなところですからね(笑)。

・そうなんですか(笑)。捕まるんですね(笑)。

そうなんです(笑)。捕まるんです(笑)。 だからまぁお茶は家で飲むと(笑)。お酒は家で飲むと(笑)。

・この辺でおすすめの観光スポットはありますか。

そうですね、お客様には倉吉の白壁土蔵群とかをおすすめしていますね。
新しく「砂の美術館」が出来たり、結構賑やかでしたよ、砂の美術館は。


・三朝の、誰にも教えたくないような秘密のスポットはありますか。

秘密じゃないですけど、やっぱり三徳山はおすすめしたいですね。世界遺産になればいいなと。
上までは何回か登ったんですよ若い頃に(笑)。

・今でも(笑)若いですけど。

今でも若いですけど(笑)。

・あと三朝は泉質ですかね。ラジウムの含有量が多いと。

そうですね。三朝で一番の売りとなれば温泉ですし、 もちろん温泉に入るんですけど、
湯気を吸って治療に使ったり、 飲んだりとか三拍子揃った温泉っていうのもなかなかね、
また温泉が無味無臭ですからね、 もちろんお料理全部温泉水使って作っているんです。

・そうなんですか。

そうなんです。だからお風呂上がったところでも温泉水ご準備していますけど、
お料理もお出汁から温泉水使って作っているんです。

・それはなかなかすごいですね。

温めることで効果も出るということですので、ご飯ももちろんですけど、
やっぱりお料理に使って少しでも体内に取り入れてもらえたらと思っています。

・じゃあ結構、三朝の方って長寿な方が多いですかね。

そうですね長寿な方も多いですし、癌に掛かっている方がね、
全国平均よりも少ないらしいんですよね。 100%だとしたら40%以下だって、
岡大の先生が40年位ずっと統計とってらっしゃるんですよね。

・普段から治療しているようなもんなんですかね。

街全体に微量の放射線があるという、天然の放射線がね、ホルミシス効果といいいますか、
ラドンが気化した時も空気を私たちが吸っているということで。
本当に岡大の先生がずっと統計をとって、
三朝町民が癌に掛かって亡くなったていうのが少ないんですよね。
40%以下だとおっしゃっていましたね。

・広島から嫁いで来られて、毎日このお湯に入られて、何か違いがありましたか。

その時はあまり感じなかったんですけど、やっぱり疲れっていうのがないですね。

・あまり疲れない。

疲れない。疲れが取れるというような。

・疲れてもお湯に入ったら取れると。

そうそう。
それと社員がね、いまほとんどお婆ちゃんになって辞めちゃってますけど、シワがないんですよ。
湯気の効果かなと思って。みんなテカテカしててね、温泉のおかげかなと、
ここに来た時に思ったんですよ。 みんな歳とっているのに綺麗だなと思っていたんですよ。

・やつぱり違うんですね。

そう。蒸気のおかげかなと。毎日必ず入って帰りますからね、社員が。

・いいですね。

いいですよ。温泉入浴付の職場で(爆笑)。


 

-----

Copyright © 2011 Sanyo Shinbun Jigyosha All rights reserved
おかやま住宅工房 かばしまクリニック